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『マイトレーヤの使命 第3巻』を読んで



                 東京都 H・Tさん
マイトレーヤの使命 第3巻

 この本は英国の画家・秘教徒ベンジャミン・クレームによる一連の著書「マイトレーヤと覚者方の再臨」「マイトレーヤの使命」「マイトレーヤの使命 第2巻」の最新のものである。これらの著書を通じてクレームが述べていることは、いわゆる「精神世界」の本に親しみのある読者以外にとってはほとんど馴染みのないアイデアかもしれない。
 そこで語られているのは、人類の歴史の初めから伝わる古の「不朽の教え」(その中には輪廻転生、カルマ、人間の霊的構造、エネルギー等の概念が含まれる)、新しい時代の時間の概念、新しい時代の政治・経済・教育などについてであり、その中核にあるのが、マイトレーヤという世界教師を長とする覚者方(光明を得た者たち、解脱した魂)の一団が公に顕現する時が迫っているというメッセージである。

 世界教師の到来というアイデアそれ自体は目新しいものではない。いわゆる「ニューエイジャー」たちの間では様々な呼び名のメシアが定期的に現れる。世界中に何百といる霊的教師(グル)の弟子たちは、自分たちの師こそが世界教師であると信じている。偽キリストとそのメッセージに魅了されたカルト教団はセンセーショナルなものを主食にして生存しているメディアに途切れることなく恰好の話題を提供し続けている。
 クレームが世界教師マイトレーヤの降臨というアイデアを大衆の前に初めて提示したのは1975年である。それから20年以上、彼はその基本となる主張を全く変更することなく、むしろ徐々に新たな事実と証拠をつけ加えながら、世界中を講演し、あらゆる質問と疑惑の声に答え続けている。
 この「使命3巻」を始めとするクレームの一連の著書(その大半は質疑応答から構成されている)を読んでいると、これらすべての知識、洞察、智恵が単なる一人の狂信的なオカルト愛好家の頭から生まれたものと考えることは非常に困難である。正直に言って、このような壮大なフィクションを20年以上の長きにわたって、これほど首尾一貫して創作し続けることは人間業ではない。しかも彼は世界教師マイトレーヤ出現の情報を世界に伝えるというこの仕事のために、彼のライフワークである画家としてのキャリアを完全に放棄しているのである。

 世界教師出現というクレームの一見空想的な主張にリアリティを持たせているのは、その生生しい具体性である。
 クレームによれば、1977年7月以来マイトレーヤはロンドンのブリックレーンにアジア人コミュニティの一員として暮らしているという。ブリックレーンにマイトレーヤを探しに行き、そこで彼の姿を見た人の体験記がこの本に収められている。それはフィクションではなく、生き生きとしたドキュメントである。
 「人々は忍び足で歩くだろう」という一章の中では、マイトレーヤが全世界の衛星放送を通してテレビの画面からテレパシーで全人類に語りかけるという「大宣言の日」についての具体的な説明がなされている。まるでその日の状況が目に見えるかのようにリアルに伝わってくる。

 「マイトレーヤの優先順位」という章では、マイトレーヤが公に出現した後の世界について、彼が世界の将来について持っているビジョンと共に、世界教師としての彼の仕事の内容が具体的に明らかにされている。中でも将来の都市、建築、交通機関、知識のプールとしてのインターネット等について触れられている部分はとりわけ興味深い。

 クレームの話はすべてが彼のオリジナルではなく、19世紀末に欧米で大きな運動を巻き起こした、H.P ブラバツキー(1831−1891)の神智学の教えとつながりを持っている。また、霊的ハイアラキーの長としてのキリスト・マイトレーヤの出現については、「アーケン・スクール」という秘教学校の創始者であり、「チベット人」と呼ばれる覚者からテレパシーで通信を受けたというアリス・ベイリー(1875−1948)の「キリストの再臨」という本の中で説明されている。  「不朽の智恵の教え」という一章の中では、神智学が西洋世界に初めて提示した様々な霊的概念(人間の構造、輪廻転生、カルマ、エネルギー、七種の光線)について、可能な限り分かりやすく解説されている。
 「画家と光線構造」という章では、秘教の伝える七種の光線エネルギーの観点から、レオナルド、ミケランジェロ、レンブラントなどの画家の特質についてユニークな分析がなされている。
 巻末には、クレームの師(覚者)によって確認された歴史上の人物 700人以上の光線構造が掲載されており、光線エネルギーについて学びたいと思っている人々にとっては尽きせぬ研究材料の宝庫となっている。
 これらの記事から明らかなのは、クレームによって提供されている情報は、ブラバツキー、アリス・ベイリーを通じて伝えられた霊的ハイアラキーからの教えを継承するものであるということで、それはすべての宗教と霊的教えの精髄である「不朽の智恵の教え」が源泉となっている。

 この大著に詰め込まれた情報は実に多岐に渡り、どれを取っても驚くべきものである。
 科学・医療などの分野では私達の常識に挑戦するかのような回答がある一方で、政治・経済・環境・教育などの分野では極めてラディカルでありながら、基本的には国連憲章の精神に則った回答が与えられている。経済における「分かち合いの原則」、政治における「社会民主主義」、環境問題では原子炉の即刻閉鎖を主張し、世界の市民運動(NGO)と共鳴する姿勢を見せており、将来の政治的ビジョンとしては、現在の国連総会をモデルとした、各国の合意に基づく世界政府の建設を掲げている。
 クレームによれば、マイトレーヤの優先事項の第一は、現在の世界を分割している先進国と第三世界の間の極端な経済的不均衡を正し、飢餓と貧困を撲滅することである。適切な食料の提供、住居の提供、普遍的権利としての医療と教育の提供がマイトレーヤの優先事項であるという。
 この書を一読した者は皆、マイトレーヤという途方もない人物の存在を信じるにせよ信じないにせよ、クレームの言葉がどれも深い洞察に裏付けられたものであり、道理に適ったものであることは認めざるを得まい。混迷する現代世界の将来について真剣な関心を持つ者なら一度は読んでおいて損のない内容であろう。

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